潮風のリスボンで
: UPDATE /
パリの街中には特にEU圏内からの観光客が増えています。フランスにゴールデンウィークはありませんが、5月は祝日が多くありフランス人で旅行に出かける人は多いです。
半世紀を祝う
昨年末50歳をささやかなホームパーティで祝いました。同時期に結婚20年を迎えたこともあり、なにか記念になるような、思い出に残るイベントをしたいと思いました。そこで先週「半年も経ってから」と呆れられつつ、ポルトガルの首都リスボンに旅行に出かけました。
サン・ジョルジェ城 (Castelo de S. Jorge)の城壁の見張り塔から
頬をなでる潮風
パリからリスボンは2時間半のフライトです。空港から市街が近く、メトロやバス、タクシーで30分もかかりません。(その代わりに、市内でも着陸前の飛行機の姿が真上に見え、音が聞こえます)到着して「パリと違う!」とうれしくなったのが、潮風とその匂い。
城壁の上からの眺め 海かと見間違うテージョ川が見える
テージョ川(Tejo)が海に流れ込む河口に発展した丘の多いリスボンは、オレンジ色の瓦屋根に、パステルカラーの建物、真っ白な大聖堂や教会、オレンジやびわの成る木や、椰子(ヤシ)があり一気に南に来た!と言う感慨を与えてくれます。
ブーゲンビリア、赤いミニバイクと消火栓、ピンクの壁のコーディネートがお見事!
装飾タイル アズレージョ
宮殿の壁はアズレージョと呼ばれる装飾タイルが施されています。8世紀からイスラム教徒が数百年支配した現在スペイン、ポルトガルがあるイベリア半島では 、「イスパノ・アラブ様式」と呼ばれる幾何学模様から発展し、花や植物を意匠に使ったり 、また一枚一枚絵付けしたタイルを絵画のようにはめたものが、多くの宮殿や教会の壁の装飾に使われています。解説は詳しい方にお任せし、リスボンの国立アズレージョ美術館で見たアズレージョの写真から見ていただきましょう。
シントラ宮殿(Palau Nacional de Sintra)
幾何学模様と鮮やかな色のタイルの装飾を数百年経った時代の私たちが、ほぼ当時の色で楽しめるというところに、釉薬(ゆうやく)をかけて焼いたセラミックタイルという素材のユニークさを感じました。莫大な資金を使って多くの建物をタイルで飾った王侯、貴族、カトリック教会の資金力、タイルに見る美と調和の追求、ポルトガルがアジアに航路を開いたことで、当時の中国や日本の陶器から受けた影響、アズレージョからポルトガルの歴史が浮かびあがります。アズレージョを日本に輸入、販売している会社のサイトの説明が分かりやすかったので、コラムの最後にリンクを貼りました。*1
国立アズレージョ美術館(Museu Nacional do Azulejo)にて
リスボンの観光スポットの中心からは外れていますが、元国立アズレージョ美術館もぜひ訪れてみてください。元修道院の建物が美術館になっており、時代を追って発展を遂げたポルトガルのタイル美術が分かりやすく展示されています。回廊に差し込む日差しと影に映えるアズレージョは時を忘れさせてくれます。
国立アズレージョ美術館 Museu Nacional do Azulejo
R. Me. Deus 4, 1900-312 リスボン
http://www.museudoazulejo.gov.pt/
左:狩りを描いたタイル / 中央:邸宅の壁の装飾もアズレージョ
干し鱈バカリャウ / Bacalhau
新鮮な魚や貝類が安く、どこの飲食店でも焼き魚や蒸したあさりを食べられる海洋国のポルトガル。ポルトガルやスペインで(またイタリアやフランスでも)よく食べられる塩漬けの干し鱈は、どこのスーパーにも置いています。値段の違いはサイズやタラの種類、産地によるよう。ポルトガルの国民食と言えるバカリャウ料理、大航海時代の保存食として優れていたことから広まったそうです。私自身は、バカリャウのコロッケが好きです。このバカリャウやイワシ、鯛、スズキの塩焼き、白米が食べられるからポルトガルが好きという日本人に、パリで何人も会いました。
バカリャウ(Bacalhau)干し鱈
チーズも豊か
食材店にならぶポルトガル産のチーズ
このように魚介類がよく食べられていますが、肉やチーズも豊富です。レストランのメニューには必ずチーズの盛り合わせがありました。昔ながらの食材店を一見したところ、羊(オヴェーリョ / Ovelho)山羊(カブラ / Cabra)のチーズが多そうです。唐辛子やパプリカをまぶしたチーズもありますし、オランダのゴーダチーズに似た赤いパラフィン包装のチーズもあります。
ポルトガルのケイジョ(チーズ)3種
手前 ケイジョ・アゼイタオン(DOP) / Quejo de Azeitão
ケイジョはポルトガル語でチーズのこと。羊乳の無殺菌乳のチーズでリスボンの近郊産です。DOP(フランスではAOP)と原産地呼称のマークがついています。ロシオ広場の食材店で真空パックにして持ち帰ったので、凸凹していていますが、本当は滑らかです。下の写真 のように大きいサイズと小さいサイズがありました。塩はしっかり効かせているけれど、乳白色の見た目通り、優しい味わいです。他の食材店でも、空港でもありましたので、これはリスボンの地元で愛されているチーズだと思います。
ケイジョはポルトガル語でチーズのこと。羊乳の無殺菌乳のチーズでリスボンの近郊産です。DOP(フランスではAOP)と原産地呼称のマークがついています。ロシオ広場の食材店で真空パックにして持ち帰ったので、凸凹していていますが、本当は滑らかです。下の写真 のように大きいサイズと小さいサイズがありました。塩はしっかり効かせているけれど、乳白色の見た目通り、優しい味わいです。他の食材店でも、空港でもありましたので、これはリスボンの地元で愛されているチーズだと思います。
右 ケイジョ・ド・カブラ チバ / Quejo de cabra Chiba
カブラはシェーブル、つまり山羊乳を使ったチーズです。またシェーブルか!と指摘されそうです。そう、シェーブル好きの私は、この「チバ」という名前から「千葉」を連想しました。写真下のように、只者ではない佇まいに、これはきっとおいしい!と期待が高まります。「これください」と言った私に、店の女性が、「これ、私の一番お気に入りのチーズなの!!味も、滑らかな食感もサイコー」と答えた時、キラリと目が光ったかもしれません。期待を裏切らないすばらしいチバ。カーサ・プラタス(Casa Pratas)という生産者が作ったアルチザナルチーズ(チーズ職人の手で、伝統的な方法で製造されたチーズのこと)ということは、ラベルから読み取れます。ピラミッドの上端を切った形のヴァランセ(Valençay)という有名なシェーブルがフランスにありますが、どうもこの生産者はヴァランセに似たチーズも作っているみたいです。フランスのシェーブル作りを勉強された千葉さんという方が、ポルトガルで山羊乳チーズを作って高い評価を受けているのかもしれない、と空想が膨らみました。
カブラはシェーブル、つまり山羊乳を使ったチーズです。またシェーブルか!と指摘されそうです。そう、シェーブル好きの私は、この「チバ」という名前から「千葉」を連想しました。写真下のように、只者ではない佇まいに、これはきっとおいしい!と期待が高まります。「これください」と言った私に、店の女性が、「これ、私の一番お気に入りのチーズなの!!味も、滑らかな食感もサイコー」と答えた時、キラリと目が光ったかもしれません。期待を裏切らないすばらしいチバ。カーサ・プラタス(Casa Pratas)という生産者が作ったアルチザナルチーズ(チーズ職人の手で、伝統的な方法で製造されたチーズのこと)ということは、ラベルから読み取れます。ピラミッドの上端を切った形のヴァランセ(Valençay)という有名なシェーブルがフランスにありますが、どうもこの生産者はヴァランセに似たチーズも作っているみたいです。フランスのシェーブル作りを勉強された千葉さんという方が、ポルトガルで山羊乳チーズを作って高い評価を受けているのかもしれない、と空想が膨らみました。
チバ
左 ケイジョ・ド・ヴァカ・エ・オヴェーリャ / Queijo de Vaca e Ovelha Curado Monte Franco
牛乳と羊乳を使ったハードチーズで、リスボンから真東のBorba産です。機内持ち込みサイズのスーツケースだったので小さいチーズを選んで買いましたが、下の写真のように、大きなチーズも数多く売っていました。
牛乳と羊乳を使ったハードチーズで、リスボンから真東のBorba産です。機内持ち込みサイズのスーツケースだったので小さいチーズを選んで買いましたが、下の写真のように、大きなチーズも数多く売っていました。
Manteigaria Silva
Rua D. Antão de Almada 1 C e D, 1100-197 リスボン
チーズやハムの真空パックに応じてくれる食材店 Manteigaria Silva のチーズ
ピリピリ
「鶏肉のローストにピリピリソースをかけたのを出す店に行きたい」と言う連れに、「ピリピリって、唐辛子のこと?」と聞き返した私。日本語では辛いものを食べると舌がひりひりすると言ったり、「ピリッと辛い」などと表現します。ポルトガルでは唐辛子や唐辛子ソースのことをピリピリ(piripiri)と言うそうです。
ポルトガル人を乗せた明国船が1543年に種子島に漂着してからまもなく、長崎や平戸などに来航し始めたポルトガルの船で日本に唐辛子が入ってきた、という説、ポルトガル人宣教師が書いた手紙に豊後の大名大友宗麟に献上して喜ばれた、などの記述があり、日本に唐辛子が入ってきた経緯には諸説あるようです。*2 ポルトガル語由来の金平糖やカステラ、ボタン、マントなどの言葉と同じように、「ピリ」という言葉がポルトガル語由来かもしれないと想像するのは楽しいです。
ポルトガル人を乗せた明国船が1543年に種子島に漂着してからまもなく、長崎や平戸などに来航し始めたポルトガルの船で日本に唐辛子が入ってきた、という説、ポルトガル人宣教師が書いた手紙に豊後の大名大友宗麟に献上して喜ばれた、などの記述があり、日本に唐辛子が入ってきた経緯には諸説あるようです。*2 ポルトガル語由来の金平糖やカステラ、ボタン、マントなどの言葉と同じように、「ピリ」という言葉がポルトガル語由来かもしれないと想像するのは楽しいです。
ジンジャ
A GINJINHA Largo São Domingos 8, 1100-201 リスボン
さくらんぼのリキュール ジンジャ(Ginja)の立ち飲みバー「ア・ジンジーニャ」(A Ginjinha)
リスボンのロシオ広場の小さなカウンターバー「ア・ジンジーニャ」(A Ginjinha)で出すお酒は、さくらんぼのリキュール「ジンジャ」(Ginja)だけ。
ジンジャ
この店の1杯1.45ユーロのジンジャを飲みに、地元の人も観光客もひっきりなしに訪れます。小さなショットグラスに注がれたリキュールに、頼めばナイフで切り取ったレモンの皮を加えてくれます。甘さの中にかすかな苦味もあり、レモンの皮の爽やかさが非常に合います。ポルトガルはポートワインが有名ですが、こんなリキュールはご存じでしたか?
尽きない魅力
リスボンには魅力ある場所が、まだいくつもありました。リスボンから電車で40分のシントラから、さらにバスで20分ほどの距離にあるモンセラーテ宮殿(Palacio de Monserrate)と庭園もその一つでした。ヨーロッパの大都市の中では物価も安く、治安が良いと言われるリスボンの人気に納得です。次もポルトガルに旅行したいと思えるくらいに。第二の都市ポルトやマデイラ島も良さそうです。
モンセラーテ宮殿の庭園
宮殿のエントランス
*1 アズレージョについての日本語の説明がわかりやすい。http://www.az-tileshop.com/aboutazulejo.html
*2 唐辛子専門店ハクタカのサイト 唐辛子の歴史や日本に伝わった由来が楽しく読めます。https://www.togarashi.co.jp/blog/2017/08/13/history/
英語やフランス語の旅行案内のサイト。リスボンの旅行情報が詳細で参考になりました。https://lisbonlisboaportugal.com
*2 唐辛子専門店ハクタカのサイト 唐辛子の歴史や日本に伝わった由来が楽しく読めます。https://www.togarashi.co.jp/blog/2017/08/13/history/
英語やフランス語の旅行案内のサイト。リスボンの旅行情報が詳細で参考になりました。https://lisbonlisboaportugal.com