おやつとチーズ

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子どもの頃のおやつ「Qちゃんチーズ」

1970年代生まれの私たち3人きょうだい のおやつに、母が常備してくれたのが、この「Qちゃんチーズ」です。カルシウムとタンパク質が豊富で、糖質が少ないおやつをと母なりに考えて、このチーズを選んだようです。
大人になってから、昔食べたお菓子の話をすることがありますね。そんな時「スティック状で、フィルムを剥がして食べるチーズがありましたよね?」と話しても、残念ながら「そんなチーズありましたか」という返事が多いのです。Qちゃんチーズは神戸の会社が製造・販売しているため、流通が当時、関西に限られていたのかもしれません。
Qちゃんチーズ
Qちゃんチーズ
母は丸い紙箱に入った6Pチーズもよく買っていましたし、小学校の給食にもプロセスチーズが出ました。高度成長期で日本人が日常的にチーズ(プロセスチーズ)を食べるようになった時期だったからでしょう。60年代から90年代はサンドイッチにスライスチーズ、ピザトーストにとろけるチーズ、とチーズの楽しみ方が多様化していった時代でした。

フランスのおやつチーズ

私にとってQちゃんチーズが普段の おやつだったように、15歳になる次女は幼いころ「フィセロ」が好きでした。「手に持って食べられるし、裂くのが楽しかった」と言い、今でも時折買って食べています。我が家では蕎麦粉のクレープにチーズ、卵、ハムを入れてフライパンで温めたものも人気です。皆さんが子どもの頃食べたのは、どんなチーズでしたか。
フランスのさけるチーズ フィセロ(Ficello)
フランスのさけるチーズ フィセロ(Ficello)

トム・ド・サヴォワ

Qちゃんチーズを常食していた頃から、数十年たった今はフランスに住んでいます。したがって当然?何かしらチーズが冷蔵庫に入っています。写真のトム・ド・サヴォワのように、穏やかで繊細な味のチーズが最近の好みです。優しいミルクの風味が後をひくフレンチアルプスの山のチーズです。
トム・ド・サヴォワ IGP
トム・ド・サヴォワ IGP
2019年の3月の同コラムで、深作るみさんがルブロション・ド・サヴォア AOPを紹介しました。*1
*1 スキーバカンスで出会えた ~人も牛もウェルネスが味を決めるルブロション・ド・サヴォア~

ルブロション同様、このトム・ド・サヴォワもスイス、イタリアの国境に接したオート=サヴォワ、サヴォワ両県で作られています。
昔はバターを作った残りの牛乳を使って作られていました。ルブロション、ボーフォールなど、サヴォワ地方には有名なチーズがいくつかありますが、私には、トム・ド・サヴォワの素朴な佇まいや素直な味が魅力です。

IGPのマーク
IGPのマーク
トム・ド・サヴォワにはIGP *2 がついており、下の写真のモンベリアール種やタリヌ、アボンダンス種の乳牛の乳から作られています。夏山を歩いていると、牛のつけた大きな鈴が「コロンコロン」と涼やかな音をたてます。おいしいチーズは、こんな環境から生まれるのですね!
フレンチアルプスで放牧されるモンベリアール種
フレンチアルプスで放牧されるモンベリアール種
*2「IGP(Indication geographique protegee/地理的保護表示)はAOP(Appellation d’origine protegee/原産地保護呼称)」 よりもゆるやかに、やや広い地域で生産が認められた特産品につく認証。

新顔の乳製品 Skyr(スキル)

さて、パンデミック以来、以前に増して免疫力を保つ重要性が語られるようになりました。いうまでもなく、日本はしょうゆ、みそ、納豆と発酵食品が豊富ですが、厳しい気候条件のアイスランドで代々食べ継がれてきたのがSkyrという乳製品です。これは独特の種菌と無脂肪乳で作られています。ヨーグルト売り場に並んでいますが、厳密にはヨーグルトとは別物です。
ヨーグルト比で2倍以上のタンパク質
ヨーグルト比で2倍以上のタンパク質
ヨーグルトよりもタンパク質が豊富で、乳脂肪分がほぼゼロ。酸っぱくなく、乳清を取り除いてあるのでトロっとしています。例えるなら、フロマージュ・ブランとギリシャ・ヨーグルトを足して2で割ったヨーグルト。
フランスの大型スーパーの発酵 乳製品のコーナーは、今でも商品の数量に圧倒されます。健康志向でランスもSkyrの人気がじわじわと高まり、現在、大小様々な乳業メーカーが売り出しいます。
ヨーグルトやフレッシュチーズなどフランス人には、「このメーカーのこれ」とお気に入りがある人が多い、そんな中、陳列棚に新たに位置を確保したのはすごいこと。満足感があるのに、決して胃にもたれず、運動をする人にもピッタリなSkyr、機会があればぜひ試してみてください。
1月後半に入って、新型コロナのオミクロン株への感染や、ワクチン未接種で濃厚接触者になったケースも含め、高校生の次女のクラスは今週5分の1が欠席しています。この2年間、私たちの多くがマスクをつけ、手洗いを徹底し、必要のない外出を控えています。家の中では換気をこまめにして、スイッチやドアノブを消毒するなど感染防止策を習慣化してきました。 そうまでしていても、防げないこともあります。

「人事を尽くして天命を待つ」という諺がふと浮かびました。
皆様も私も、健康で、たくさん笑って、自分とまわりを楽しませる工夫に満ちた一年が過ごせますように!

五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。