流れ星を見る時間
: UPDATE /ペリゴールでヨガ
Go Toトラベルキャンペーンをしなくても、この夏フランスでは国内旅行が盛んでした。渡航制限が続く中EU内であっても国外を避け、フランス国内で過ごす選択をする人が多かったのです。
8月半ばにフランス南西部のドルドーニュ地方、豊かな森林に恵まれることから「緑のペリゴール」(Périgord vert)と呼ばれる地方に行き、ヨガのリトリート*1に参加しました。Teyjat村(テイジャ)にある友人オートンスの別荘Le Domaine d’H(ル ドメーヌ ダッシュ)で宿泊し、庭の大木の木陰でヨガを習いました。この家は19世紀にオートンスのエンジニアだった高祖父が建てたもので、オートンスで5代目です。
Le Domaine d’H(ル ドメーヌ ダッシュ)
8日間、朝食後の散歩と体操、ヨガ、基本菜食の食事作り、夜の瞑想をして頭と身体の緊張がなくなり、静かで広がりのあるエネルギーに満たされました。
ペルセウス座流星群の活動が最も活発になった時期と重なり、毎晩大小の流れ星を数えました。ある晩、プールサイドの瞑想を終えて振り返ると、地面に向かって落ちる赤い火の玉が見えました。すぐ近くに見えたので流れ星ではないように思えたのですが、調べると非常に明るい流星の「火球」だったようです。驚きました!
物理的にも精神的にも日常を離れ、自分をケアするのがリトリート。世界規模で新しい感染症の影響を受ける中、知らず知らずのうちに積み重なったストレスや不安が軽くなった気がします。
体と心の健康を維持しようと日々の習慣を見直す人が増えた今年、これから「災い転じて福となす」にできるかどうかは一人一人の行動のシフトにかかっている、そんな気もしています。
*1 静養や休養といった意味
ペリゴールのトリュフ園 宿木の下でトリュフが育っています
ペリゴールといえば「トリュフ」
森や川、無数の池、中世の城が点在するドルドーニュ地方。旧石器時代から人が住んでいたことでも知られており、クロマニョン人の化石やラスコー洞窟の壁画もこの周辺地域で発見されました。夏は道端のあちこちにベリー類が実り、秋はきのこや特産品のくるみ、栗などがとれます。狩猟・採集できる野生の植物や動物が豊富な地域だから、先史時代から人が住みついたことが想像できます。
夏は暑く、冬は寒い。そして適度に雨が降る気候は地中に育つキノコ、トリュフの成長に欠かせないそうです。別荘の周囲の森林40ヘクタールを所有するオートンスは、友人でトリュフ園の所有者のもとを一緒に訪れた際、「うちの敷地でもトリュフを栽培できる??」と期待たっぷりに聞いていました。「いや、あなたの土地は石灰質土壌(アルカリ性の土壌)じゃないからダメ」と即座に言われ、がっかりとしていました。
晩秋から冬のトリュフの季節に訪れて、トリュフ市の活気も見てみたいです。
トリュフ探しの名犬-イタリアから来たラゴット・ロマニューロ種の犬
Teyjat村(テイジャ)のフレッシュチーズ
ヨガ合宿の朝の散歩の通り道に酪農場がありました。放牧され草をはむ数十頭の牛を眺めた日の夕方、付近のVaraignes(ヴァレーニュ)で夏の間、週に一度行われる生産者市場(Marché des Producteurs de Pays)を訪れました。
町の中心広場を囲むように地元の生産者がスタンドを並べ、チーズを始め、夏トリュフ、蜂蜜、ラム肉を使った料理や酪農場が作るアイスクリームを売っています。訪れる人は広場に並べられたテーブルと椅子で食事を楽しむ仕組みです。
そこで散歩で見かけた酪農場のスタンドが出ていたので、フレッシュチーズを買ってヨガ仲間と楽しみました。作り立てを味わうのですから地元で味わうのが一番。爽やかで軽やかな風味は、そのままパンに塗っても、胡椒をかけても、蜂蜜やジャムをつけても楽しめそうです。
Teyjat村(テイジャ)で作られるオーガニックの農家製フレッシュチーズ
婚約パーティのチーズプレート
8月末に夫の従弟のマキシムが婚約し、先日伯母の家でお祝いの立食パーティに呼ばれました。
初めて会った24年前、彼は3歳でした。プラチナブロンドの髪に精緻な顔が人形みたいだったのを思い出します。3つ年上の姉に言い負かされて、壁に頭をぶつけて怒っていた彼も大人になり、学校の後輩で今は会社の同僚でもあるルイーズとの結婚を決めました。
初めて会った24年前、彼は3歳でした。プラチナブロンドの髪に精緻な顔が人形みたいだったのを思い出します。3つ年上の姉に言い負かされて、壁に頭をぶつけて怒っていた彼も大人になり、学校の後輩で今は会社の同僚でもあるルイーズとの結婚を決めました。
落ち着いて口数の少ないルイーズ曰く「ケンカはしないけど、マキシムが一人で怒っている時はよくある」そうです。走るのが趣味の彼女は毎週日曜に20km走っており、走りに出かけて自分の婚約パーティに遅刻するチャーミングなところも。若い二人の末長い幸せを願います。
右上から時計回りにオッソー・イラティ、ブルー・ド・シェーブル、干しパパイヤをまぶしたフレッシュチーズ、バノン、ブリー・ド・ムラン、モテ
伯母の家で供されたのは、パリに数軒店がある有名なチーズ店「Laurent Dubois(ローラン デュボワ)」に注文したチーズのプラトーです。栗の葉を敷いたシェーブルのバノン(Banon)やモテ(Mothé)、干しパパイヤをまぶしたフレッシュチーズなどが、切り分けられ盛り付けられています。金色の中敷に砕いたピスタチオ、チーズにかかったパプリカのスパイスも色を添え、秋の演出が見事なプラトーだと思いませんか。
プラトーの真ん中の白カビチーズはブリー・ド・ムランです。兄弟チーズのブリー・ド・モーやクロミエよりも強い風味がありムラン特有のコクがあります。やや強い塩味にもちっとした食感です。
プラトー右端は珍しいブルー・ド・シェーブル。牛乳か羊乳製がほとんどのブルーチーズをヤギの乳で作ったところがユニークです。青カビチーズのピリッとした刺激や強い塩味が苦手な方も、シェーブル独特の匂いや酸味が苦手な方も、穏やかでクリーミーなこのブルーチーズを楽しめると思います。定番のチーズはもちろん、このシェーブルのようにユニークなチーズとの出会いと楽しみを、これからも深作るみさんと一緒にお伝えできたら幸いです。皆さんの星を見る時間、自分のための時間、家族や仲間と過ごす時間が豊かなものでありますように。