冬の終わりの特効薬
: UPDATE /
年明け後も長く続くパリの冬は、体調を崩しやすいだけでなく気持ちまで暗くなってしまうこともあります。でもこの冬は平昌オリンピックで活躍した日本人選手の皆さんのおかげで、感動に涙している間に2月も終わろうとしています。
感動や好奇心はビタミンDに勝る冬の特効薬でした。すっかり葉を落とした冬の木々も、近づけば枝いっぱいに芽を出しています。
グランド・エピスリー・ド・パリ
自宅から歩いて行けるパリ16区のラ・ミュエット(La Muette)に、昨年11月グランド・エピスリー・ド・パリの右岸店が開店しました。グランド・エピスリー・ド・パリ*1は「パリの大型食料品店」という意味で、そのまま店の名前になっています。以前からある左岸の7区の店は、広い店内を見て回るだけでも楽しいですし、商品の見せ方にも工夫があるので、16区の右岸店ができるのも楽しみにしていました。
16区の店のフロア自体は、7区の店に比べコンパクトで、チーズ、バター、ヨーグルト、クリームなど乳製品の売り場も、商品を多数おけない代わりに厳選しているようでした。スペインのイベリコハムを食べられる BELLOTA—BELLOTA などのレストランも入っている上、水曜日から土曜日は夜中の12時まで空いているので、16区近辺に滞在する旅行者にも便利だと思います。
*1 ウェブサイトの日本語の情報は左岸店のものです。グランド・エピスリー・ド・パリ
エティヴァ
友人宅でのディナーに近所のチーズの名店フロマジュリー・ドートゥイユ(la Fromagerie d’Auteuil)で用意してもらったチーズを持ち寄りました。黒トリュフ入りペコリーノのモリテルノ、パーフェクトに熟成されたトロトロのモンドール、熟成の技が感じられるシェーブルで繊細なクラックビットゥーと私自身の気に入りチーズを3種選んだところで、4つ目が思いつかず、店員に勧められて選んだのがエティヴァです。
モリテルノ・アル・タルトゥーフォ、モンドール、エティヴァ・ダルパージュ、テット・ド・モアンヌ、クラックビットゥー・フェルミエ
「アルパージュ」(alpage=夏季の高地放牧)とついたボーフォールやアボンダンスなどをチーズ店で見かけると、高山植物の草花のアロマが感じられるチーズだろうかと期待値が上がるのですが、エティヴァ・ダルパージュ(Etivaz d’alpage)も名前から、夏の高原で放牧される牛のミルクで作られた様子を想像して、試さずにはいられなくなりました。
エティヴァはスイスのAOP(2000年に認証取得)チーズです。エティヴァの公式サイトによれば、5月10日から10月10日の間、麓の酪農家は1000mから2000mの標高の高原に牛を移動させます。そこで初夏から秋口まで2800頭の牛を放牧し、約130の山小屋でエティヴァを作っています。グリュイエールの仲間で味わいは似ていますが、グリュイエールと違い、エティヴァは生産量が320トンと少ないので希少です。風味も、グリュイエールよりもっとパンチのきいた味わいです。草花のアロマよりも、ミルクのコクが感じられたのと合わせてかすかに香りがしたのは何だったのだろうと思いましたが、公式ウェブサイトの動画*2で理由が分かりました。チーズ作りの山小屋(シャレー)で、薪を燃やして銅鍋のミルクを温めるので、燃える薪の匂いや煙の匂いがつくのですね。エティヴァの公式ウェブサイトの動画で山小屋でのチーズ作りを紹介しています。興味があればご覧になってください。
*2 エティヴァ作りの動画
仕事柄デスクワークばかりな上、ヨーロッパの長い冬は特に家にこもりがちだった反省もあって、時々早朝にウォーキングをしています。絵を見に行ったり、映画を見たりするのも楽しいですが、短時間でもウォーキングがてら歩くと、その日の仕事や家事がはかどることを実感しました。健康を意識して身体を動かすのと同じように、好奇心や感動を意識して求めたら、寒いのが気にならなくなりますね。春を待つこの季節、皆さんの楽しみ方や工夫も機会があれば聞かせてくださいね。