寒いパリを楽しむアイディア

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12月初旬のエッフェル塔のライティング、歌手ジョニー・アリデイの喪に服して、革ジャン色の演出12月初旬のエッフェル塔のライティング
歌手ジョニー・アリデイの喪に服して、革ジャン色の演出

ハンドクラフトのサロン

近頃、ハンドクラフトのサロンと食品のサロンに行く機会がありました。出展した友人の招待で訪れたハンドクラフトのサロンは、女性の20代から70代くらいまでのビジターが、 手芸や工作、アクセサリーやペーパークラフトと様々な店が出店している中から、自分の趣味やセンスにあう店を見つけていました。男性のビジターは、奥様やガールフレンドのお供でついて来た風情でした。

誕生日の近い次女には、キーホルダーや10センチ四方の大きさのピクセルアートが作れるセットをいくつもねだられました。娘の買い物に甘い夫から出かけ前に、好きなものを買っていいと言われたらしく、父親の声色を真似て「なんでも好きなものを買ってもいいよ」と言っていたよと次女に言われると、私はお手上げです。

ハンドクラフトのサロンにてハンドクラフトのサロンにて

私が気になったのは、日本の布を扱う店で完成作品として、一面が紺絣っぽい布でもう一面がウールのリバーシブルになったマフラーでした。ミシンと布があれば手作りできそうだったので、同じ会場のブラザーミシンのブースでは普及品から高級品まで数々のミシンに目がいってしまいました。

ピクセルアートのセットピクセルアートのセット

パリは一年中このような「サロン」と呼ばれる展示会や見本市の多い都市ですが、屋内のサロンは、冷たい雨がよく降るこの季節でも天候に関係なく楽しめます。この時期、パリで家族や友人と外出先を選ぶ際に、美術館やコンサート、観劇などと合わせて、サロンという選択肢も少し目先が変わって楽しいですし、コンサートや演劇と違い事前に予約も要りません。

ハンドクラフトのサロンにてハンドクラフトのサロンにて

味のサロン

パリ市内17区の展示会場で毎年12月初めに開催される味のサロン(サロン・サヴォール Salon Saveurs*1)については、過去に2度*2コラムで取り上げました。今回はワインやシャンパンの好きな友人と一緒に回り、彼女がいろんな製造者のシャンパンを試飲するのを眺めながら、改めてお酒の好きな人も楽しめるサロンだと気がつきました。アルザスやブルゴーニュのワインからアルマニャック、ビールまで様々出店していましたが、クリスマス前という季節のせいなのか、それともパリからの地理的な近さもあるのでしょうか、アルコール類の中ではシャンパンの製造者が最も数が多かったです。地方ごとのチーズのスタンドも数多くありました。

シャンパンのスタンドシャンパンのスタンド

ドライプルーンの店プルノー・カボ(pruneauxcabos.com)では、実の皮が薄く、特大で味がいいドライプルーンや、イタリア、シチリア島の保存食品の店 フラテッリ・ブルジョ(Fratelli Burgio)で、瓶入りのカポナータや玉ねぎのコンフィの500g入りを買い求め、下記のアリゴの持ち帰りパック1kg4人前を買ったら、買い物袋がずっしり重い。ショッピングカートで来ている人をよく見かけるはずです。

*1 味のサロン(フランス語)
*2 2014.12.24 コラム
*2 2013.12.24 コラム

FRATELLI BURGIO のカポナータ、玉ねぎのコンフィFRATELLI BURGIO のカポナータ、玉ねぎのコンフィ

アリゴはオーブラック(l’Aubrac)地方の郷土料理で、チーズとじゃがいも、クリーム、バター、ニンニクが入っています。マッシュポテトに削ったフレッシュなトムと呼ばれる山のチーズを加えて練り上げるようです。写真のように面白いように伸びます。材料は単純ですが、トムチーズの旨味に、ジャガイモのホクホク感が加わり、ほんのかすかなニンニクの香りがおいしさを引き立てます。この時期、チーズ店には温めるだけで食べられる、持ち帰り用の真空パックを売っています。フランス旅行の際には買い求めて日本に持ち帰ることもできます。マッシュポテトが付け合わせになるように、アリゴも付け合わせとして食べられているようですが、これだけでも十分食事になると思います。

アリゴ(Aligot)アリゴ(Aligot)

チーズとパンがフェットの味方

ノエルから年始にかけては、家に人が集まって食事をする機会が多く、買い物、料理、片付けに時間がかかる、そんな時ほど買ったままを出せるパンとチーズとワインはありがたいです。

十分な量を買っておけば、直前に一人か二人増えても食材を買い足さなくても済みますし、パンとチーズとワインは、招く側の個性と好みを映し出すので、招かれた側は意外に注目します。パンやワインがおいしいとメインの料理への期待が高まり、食事の締めくくりのチーズがおいしいと、店を選んで買っているのだろうと思いますし、食べ物に対する関心が高いと感じます。歩いていける距離においしいパン屋やチーズ店があるかどうかは、皆の関心事で、どこのパン?チーズ?とテーブルの話題によくなります。

左手前からロックフォール、プーリニー・サン・ピエール、モンドール、コンテ クミン入りミラベルのジャムを添えて左手前からロックフォール、プーリニー・サン・ピエール、モンドール、コンテ クミン入りミラベルのジャムを添えて

上の写真のように穏やかで繊細なシェーブルや、塩味がくっきりとあり、味が濃厚なロックフォールなどのブルーチーズ、とろりと滑らかで、ミルクの風味のモンドール、ナッツのようなコクのあるコンテなど、硬いものと柔らかいもの、味わいの違うもの、牛、羊、ヤギなど原料乳の違うものを意識して、数種類買うのが、私の習慣です。一方、来客の人数が多い時にしかできませんが、先ほどの方法とは逆に、大きいモンドールやブリー・ド・モーを一つ、ホールのままテーブルに出すとお客さんが「わあっ」と驚いて、場の期待が盛り上がります。

和食の広まり フランス人も巻き寿司を作る

中華もフレンチもイタリアンも取り入れて、アレンジして、家庭で作る国は、日本だけではないかと思っていたのですが、最近はフランス人も家で巻き寿司を作ったりするようです。夫の年下の従兄弟たちは、会うたびにお寿司がおいしく作れるようになったと得意顔で報告してくれます。

和食への興味はますます広がり、深まっているようで、味のサロンにも日本食材や日本茶の店が4、5店は出ており、日本のデパートや高級スーパーで目にするような、小規模醸造の醤油やみりん、味噌、ふりかけ、のり、昆布の佃煮、即席味噌汁など保存食品を売る店が繁盛していました。日本の食品や和食のレストランが豊富なカリフォルニアから、パリに引っ越して来た12、3年前とは隔世の感がします。今やパリのどこのスーパーでも、キッコーマンの醤油を置くようになりました。今週も、知り合いのフランス人のキネジセラピスト(運動療法士)の男性から、かぼちゃの煮物のレシピを聞かれたところです。パリの一般の人が和食を家で作るようになってゆくのでしょうか。それともこれは一部の現象なのでしょうか。
今回も、最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。皆さま、お身体をお大切に、楽しいクリスマスと年の瀬をお過ごしください。

五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。