パリの秋は、アートにチーズに盛りだくさん

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10月19日から22日までパリのグランパレで国際コンテンポラリーアート・フェア(FIAC / フィアック *1)が開催されました。今回44回目を数えるFIACには193のアートギャラリーが出展しました。

FIACは元々アート作品の売買を行うアート市場としての催しがメインとのことですが、訪れたのが最終日の日曜だったからか、アートを購入するというよりも(私のように)眺める楽しみに来ましたという風情のビジターが多かったです。これから飛躍するアーティストの作品も、今、大人気のアーティストも、ピカソ、ミロ、キース・ヘリング、バスキアなど「歴史」になったモダン・アーティストの作品も全てを同じ場所で、手に触れる近さで見られることや、グランパレという大きな会場をギャラリーごとに仕切り、歩いて見て回る仕掛けが、普通の美術展とは全く違った楽しみを与えてくれます。

Youtopia 2017 Pae WhiteYoutopia 2017 Pae White 写真はfiac.comより

 

グランパレのFIACグランパレのFIAC

ちなみに会場で見られた作品で事前に最高値の噂が上がったのは、村上隆さんの「欲望の炎」という、カーボンファイバーに金箔を重ねた、4メートルもの大きな作品です。写真を撮り損ねてしまったので、興味のある方はネットで検索して見てください。
*1 FIAC 毎年10月にパリ、グランパレで開催されています。

今、食べたいチーズがある

一番好きなチーズを10人のフランス人に聞けば、10のチーズの名前が返って来そうなほど、好みは人それぞれです。以前ベルギーに住んでいたことがある日本の友人が、チーズ売り場で「お買い得価格」になっているモンドールを見かけたとフェイスブックにアップしていました。
「お買い得価格とはいうけれど、ベルギーに住んでいた頃の値段と比べると」と嘆く彼女のコメントを読んで、熟成チーズが好きだとは聞いていたけれど、中でもモンドールが好きなのだなと知る一方で、この週末も我が家の生意気盛りの10歳の次女に「何回も頼んでいるのに、一体いつになったら、私の好きなおいしいカマンベールを買って来てくれるの?」と言われたので、皆「これを今、食べたい!」というチーズがあるものだなあと思った次第です。

ちなみに友人が買おうか、買うまいか悩んでいるモンドールは、フェイスブックにアップされた写真をよく見てみるとパリ農業コンクールで2017年に金賞を取ったバドーズ(Badoz)のものです。Badozのモンドールはエフアール・マーケティングの取扱商品です。右のステッカーが金賞の印で、これが商品に印刷されていたり、シールになって貼られています。チーズに限らず、ワインやオリーブオイルなど様々な農業製品が対象になっているので、食品の買い物をする際の質や味の一つの基準として見ています。

- © CGA– © CGA

レーズンとフレッシュチーズの組み合わせ

今食べたいチーズがあるという話で、そもそも次女がカマンベールの話を出したのは、長女から頼まれたチーズを買ってきた日でした。だから、次女はヤキモチを焼いていたということに、たった今思い至りました。我ながら鈍いお母さんですね。

一方、長女から「これを食べたいから買って来て」と頼まれたチーズは、写真下のフレッシュ・シェーブルです。レーズンやドライクランベリーをフレッシュチーズにかぶせたもので、それぞれシェーブル・フリュイルージュ(Chèvre fruits rouges)、シェーブル・レザンブロンド(Chèvre raisin blond)という名前です。

これはフランスの南西ドルドーニュ地方にあるフロマジュリー・ソレダ(Fromagerie Soréda)の工房で作られたのチーズですが、こういうチーズは、パリのどのチーズ店に行っても置いてあり、またチーズ店が自作することも多い、人気のチーズです。シェーブルに限らず、牛乳のフレッシュチーズを使ったものもあります。フレッシュチーズはあっさりと柔らかで、ドライフルーツの甘みや酸味がチーズに沁みて、おやつやデザート感覚で楽しめます。

左上と右下がドライフルーツで覆ったフレッシュシェーブル、真ん中はクール・オ・ラン左上と右下がドライフルーツで覆ったフレッシュシェーブル、真ん中はクール・オ・ラン

クール・オ・ラン(Coeur Au Lin / 亜麻仁入りヌシャテル(Neufchatel))

写真上のプラトーの真ん中は亜麻仁入りのヌシャテルで Coeur Au Lin と言います。
ラン(Lin)は亜麻仁(アマニ)のことで、英語ではフラックスシード(flaxseed)です。ヌシャテルは円筒形や四角いものもあるらしいですが、ハート型以外の形があることは、コラムのために調べて初めて知りました。この素晴らしい亜麻仁入りのヌシャテルは、フロマジュリー・アンスラン(Fromagerie Anselin)*2 というノルマンディ地方にあるチーズ工房が作っています。

切ると、亜麻仁がこれでもかというくらいたくさん入っています。オメガ3の必須脂肪酸の一種α—リノレン酸が豊富に含まれているということで、亜麻仁はスーパーシードとも呼ばれているらしいのですが、そんな理由をつけなくても、個性があって、おいしいからまた買いたいです。しっかりしていてナイフでスライスしやすいのも、おつまみとして出すのに向いていますし、このチーズのしっかりした塩味に、ゴマに似た亜麻仁の風味がよく合います。また亜麻仁が白カビチーズの表皮辺りのわずかな苦さを消しているのも、組み合わせの妙です。

*2 フロマジュリー・アンスラン

ラングル AOP

今回のコラムの最後に紹介するのはラングルです。牛乳が原料のウォッシュタイプで、シャンパーニュ地方で作られています。
真ん中の窪みを泉(フォンテーヌ)といい、上下を返さずに作るから窪むと聞いています。香りは強め、口に入れるときめ細やかで、しっかりした旨味を感じます。後味が何かに似ていると思って、考えたらカラスミの味!これは、やはりお酒が欲しくなる味ではないでしょうか。

ラングルラングル

FIACでヘンリー・ムーアの彫像を置いていたのは、Landau Fine Art のブースでした。懐かしい感じがするのは、日本で展示がかなり多いからかもしれません。私と同郷の大阪の人にとっては、御堂筋に並んだ彫像の一つでもあります。小さなブースでしたが、カンディンスキーや、ミロ、ピカソなどの小品の絵画を置いていたので、足を止めて見る人が多かったです。

先週末は大型の台風と衆議院選挙が重なり、大雨で交通に影響が出て大変だったと思います。台風一過の後、これから10月末から11月は美しい紅葉の季節を迎えますね。パリでは日本のような見事な紅葉は見られませんが、マルシェには大きな栗や、採りたてでまだ濡れている胡桃、豊富なきのこ類が並び、秋を演出しています。フランスも日本と同じで四季を感じる喜びがあります。こちらは朝晩冷えこむようになってきました。皆様、お体を大切に楽しい秋をお過ごしください。

ヘンリームーア(Henry Moore)ヘンリームーア(Henry Moore)FIACにて
五条ミショノウさやか

2004年からパリに在住。 家族は夫と娘が二人。 業界誌や講演録などの英日翻訳をしています。