霧に霞むエッフェル塔
: UPDATE /霧とスモッグ
エッフェル塔が半分霧に隠れて見えない日が数回あった。大気汚染のニュースと合わせるように霧が出る夜には「まるで19世紀の霧のロンドンみたい!」と思う。100年前のロンドンは煤煙で黒い霧がでたそうだが、最近のパリの空は白っぽくかすんでいる。
エッフェル塔にかかる霧とスモッグ
ステッカーで交通規制
パリ首都圏ではここ数年「大気汚染」警告がたびたび出され、この一月から写真のような緑と1から5までの数字が印刷されたクリテール(Crit’Air)ステッカーを自動車のフロントガラスに貼らなければならなくなった。電気自動車や水素自動車は「排出ゼロカー」で緑のステッカー、1から5は製造年が新しいものが1から始まり、ディーゼル車はガソリン車よりも番号が大きくなるという分け方をしている。粒子状物質PM10が80μg/m³の濃度になると警告がでて、50μg/m³が2日続く場合も警告が発せられ、パリ市内へ入る車両の通行規制が行われる。中国やインドの都市部のようにすでに深刻な大気汚染が問題になっているが、大気の質を地図上で見られるこういうサイト*1を見ると、その深刻さが一目瞭然だ。
*1 http://aqicn.org/map/paris/jp/
クリテールステッカー
年末年始はホームパーティ
12月下旬から新年にかけて家族や友人をお互いの家に招いたり、招かれたりで集まって食事をする機会が多くあった。何もお祝いの季節に限ったことではないが、家族や親戚が揃う食事を大切にするフランスの習慣はいいものだと実感する。食事を好きな人達と分かち合って食べるのは、何にも勝る楽しい時間だ。
アペリティフのカナッペ 手前はタラマ、奥はイクラ
生牡蠣 レモンもいいけれど、フランス風にエシャロット+赤ワインヴィネガーで。
仔牛肉とクネルの入ったヴォロヴァン(Vol-au-vent)
クリスタルのろうそく立てがテーブルセッティングに立体感を持たせる
秋冬限定のチーズ
季節に限らず、チーズとデザートのないフレンチの食事というのは、存在しないと言っていい。この冬、親しい人が集まるホームパーティでも、チーズは必ず登場した。冬のチーズといえば、やはり写真下のモンドール(Mont d’Or)が一番人気だ。
モンドール
大晦日に友人家族の家で3家族が揃ってホームパーティを開くことになり、私はチーズの持ち寄りを頼まれた。いつもコラムで書いているパリ16区オートイユのMichel Fouchereauさんの店で、友人の家に持っていくチーズプレートを準備してもらうことにした。あらかじめ頭の中に思い描いていたモンドール、クリーミーなタイプのゴルゴンゾーラ(ゴルゴンゾーラ・ドルチェ)と、モリテルノの3種に、花びらのように削ったテット・ド・モアンヌを飾ったプレートを注文した。大人数で集まるときはタイプが様々なチーズを5〜6種類用意することが多いけれど、個性のはっきりした味わい濃いチーズを3種類だけ出すのも、印象に残るかしらと考えながら。
フランス国外に住むチーズの好きな友人に、パリでのチーズの値段を聞かれることがあるので紹介すると、この写真のプレートで日本円にして8000円ほど。ただし、店によって、またチーズによって値段は異なるし、パリと地方では値段はかなり違う。
左からモンドール、ゴルゴンゾーラ、モリテルノ
うずらのローストに焼き林檎を付け合わせたメインが済んだら、次はチーズとサラダ。食べる45分くらい前に冷蔵庫から出しておくと、食べるときにモンドールがちょうど良い柔らかさになるというチーズ店の店主の勧めに従った。モンドールをスプーンですくってパンへ乗せる。見た目を裏切らないとろりとした食感に、まろやかできめ細かいミルクの味わい、同席する友人達もスプーンが止まらない。パンは、パン・オ・ルヴァン(ルヴァン=天然酵母)や、イチジクの入ったパンを合わせたが、バゲットもいいし、どんなパンにも合いそうだ。そろそろデザートという頃、エピセアという針葉樹の箱の底にほんの少しだけ残ったモンドールを見て、やっぱりこのチーズは秋冬限定のチーズの王様だと思う。
ここでもモリテルノ
上の写真のプレートの右手はトリュフ入りのペコリーノでモリテルノ・アル・タルトウーフォ(Moliterno al Tertufo)という。イタリアチーズだからか、フランス人は意外と知らないモリテルノを周りの友人、家族に勧めていることは、前にもコラムで取り上げた *2。先週東京からパリに夫婦で遊びに来ていた友人にも、モリテルノを持って帰ってもらった。私が味について感想を書くよりも、友人の言葉がよく表現していると思うので紹介したい。「脳天に来るくらいの美味しさ!」だそう。
旅行やご出張でイタリアにお出かけになる際は、是非お試しを。時期によって多少味が変わるそうで、モリテルノに限らず「今、このチーズはおいしいか、どうか」をチーズ店の熟成士や店員にお聞きになるのもいいと思う。また、好きなチーズ名を上げて「こういうチーズが好きなのだけれど、今回は食べたことのないものを試してみたい」と伝えてみるのも一手。
飾る人の個性が出るクリスマスツリー
デトックスのはずが、、、
年明けに会う周りのフランス人は、元気だった?との挨拶の後に「ノエルから新年まで食べてばっかり」と言い、人によっては「シャンパンを飲みすぎた」なんて話している。「それで今はデトックス中よ」という言葉もよく聞いた。しかし、そこはフランス、甘い誘惑が次から次へとやって来る。
一月はガレット・デ・ロワ(王様のガレット)というアーモンドクリームのパイをキリスト教の祭日エピファニー(公現祭)に楽しむ習慣がある。日本に出店しているパリの有名パティシエが販売しているそうなので、見かけられたかもしれない。ガレットは6日のエピファニーだけではなく、一月中を通して店頭に並んでいる。私はもう今月2度もいただいたし、家族は学校給食や会社でも出たそうで、3、4回は食べているとのこと。アーモンドクリームのパイは、単純なだけにそれぞれのパティシエの個性がパイ生地やアーモンドクリーム、アーモンドクリームの風味のバリエーションに現れて、クセになるおいしさがある。フェーヴと呼ばれる陶器のフィギュアがひとつ中に入っており、フェーヴが当たった人はその日1日王様、または女王様になるという決まりも微笑ましい。
砕いたヌガーとアーモンドを乗せたフランボワーズ風味のガレット・デ・ロワ
新しい年が始まってもうすぐ一ヶ月経つ。昨年から今年の年初にかけては、英国のEU離脱やトランプ大統領の登場など政治の大きな動きがいくつかあったが、2017年はフランスの大統領選挙を含め欧州各国で選挙がある。直近では年始のイスタンブールの銃乱射テロもあった。自分自身もそうだが、パリの人は2015年11月の同時テロ以降、拭えない不安を飼い慣らして生活していると思う。忘れているつもりでも、街中で大きな破裂音を聞いたりすると、以前とは違う意味でドキリとさせられる。
今回もチーズコラムを楽しんでいただけたでしょうか。新年にあたって、皆さんと愛するご家族のご健康と安全を心よりお祈りします。受験生の皆さんは試験でご自分の力が十分に出せますように。