フェット お祝いの季節
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ノエルのテーブル
サロン・サヴォール(Salon Saveurs) – 味の見本市
12月のパリは日照時間が短いものの、高気圧におおわれ晴天の多い日が続いています。食料品の専門店ではフォアグラやスモークサーモンなどホーム・パーティに必要な食材を求める人をちょくちょく見かけるこの頃です。11月のサロン・デュ・ショコラ(チョコレートの見本市)、12月のサロン・サヴォール(味の見本市)と年末にかけて食の見本市が多くなります。フランスの食品業者にとっては、フェット(fête:お祝い、パーティ)の機会が多い12月が一年最大の書き入れ時だからです。
先日訪れた生産者直売の見本市、*1「サロン・サヴォール」Salon Saveursでは、平日にも関わらず非常に多くの客で賑わっていました。荷物キャリー持参のお客さんがワイン、フォアグラ、生牡蠣、キャビア、スモークサーモン、ソシソン(サラミ類)などをすばやく買い込んでいました。開場から一時間ほどで荷物キャリーをいっぱいにしている人が少なくありませんでした。350の生産者が参加するこの見本市で、毎年フェット用に食品を購入する常連客が多いのでしょう。そう言う人は我々のように一カ所で立ち止まったりせず、さっさとお目当てのお店だけを回っていたようです。そんな常連客の隣に私も並び、ちゃっかり便乗して常連客や生産者にあれこれ尋ねながらチーズやソシソンなどの買い物を楽しんで来ました。
フォアグラ専門店 左から
生フォアグラ、鴨胸肉、調理済み瓶入り、ミニココット入り
味の見本市にはフランスの食品だけではなく、イタリアのパルメザンチーズやバルサミコ酢の専門店、スペインのイベリコ豚のハムの専門店、スイスのグリュイエールチーズの専門店と種類も多く、食べ物に興味があって体力のある人なら丸一日楽しんで過ごせそうなほどの規模がありました。
オープンスペースの展示会場には仮設レストランが3か所あり、生牡蠣から立ち上る海の香りと白ワインの香りが漂う海鮮レストラン(50人が生牡蠣を食べる光景は壮観でした)、大きな鍋に入ったAligot(溶けたチーズをジャガイモのピュレと混ぜたオーベルニュ地方の料理)のスタンド、ジロール茸やセップ茸たっぷりのオムレツ屋などがありました。私はこの見本市で午前中食品を味見した後ということもあり、同行した友人と一つのキノコオムレツをシェアしたのですが、大柄でよく食べる私でもオムレツ半分でお腹がいっぱいに。一方、左右のテーブルご年配のフランス人達は皆一皿食べ終えて、その上デザートを食べる人もいて、その健啖ぶりには感心しました。
フォアグラ入り干しイチジク
”Les Fidoucettes” by Prestiges de nos terroirs
味の見本市にはフランスの食品だけではなく、イタリアのパルメザンチーズやバルサミコ酢の専門店、スペインのイベリコ豚のハムの専門店、スイスのグリュイエールチーズの専門店と種類も多く、食べ物に興味があって体力のある人なら丸一日楽しんで過ごせそうなほどの規模がありました。
オープンスペースの展示会場には仮設レストランが3か所あり、生牡蠣から立ち上る海の香りと白ワインの香りが漂う海鮮レストラン(50人が生牡蠣を食べる光景は壮観でした)、大きな鍋に入ったAligot(溶けたチーズをジャガイモのピュレと混ぜたオーベルニュ地方の料理)のスタンド、ジロール茸やセップ茸たっぷりのオムレツ屋などがありました。私はこの見本市で午前中食品を味見した後ということもあり、同行した友人と一つのキノコオムレツをシェアしたのですが、大柄でよく食べる私でもオムレツ半分でお腹がいっぱいに。一方、左右のテーブルご年配のフランス人達は皆一皿食べ終えて、その上デザートを食べる人もいて、その健啖ぶりには感心しました。
*1 Salon Saveurs(味の見本市)http://www.salon-saveurs.com/
*2 100%ITALIA http://www.gourmetonline.it/
左からスモークしたモッツァレラ、三つ編みモッツァレラ、トリュフ入りブラータ、手前ゴルゴンゾーラ入りブラータ すべて水牛乳製
フェットの食事
フランスに暮らすようになってから、フランス人家庭のハレとケの食事の差が大きいことに気がつきました。普段は例えばお肉や魚を焼いたものとジャガイモやさやえんどうなどの付け合わせ野菜と、サラダとチーズ、果物かデザートといったシンプルなものですが、お祝いの食事は、シャンパンにおつまみのアペリティフから始まって、前菜、メイン、サラダとチーズ、デザート、美しく盛った果物、チョコレートと8時から10時ごろまでゆっくりおしゃべりを楽しみながら頂きます。ノエルや大晦日に贅をこらした食事を用意する主婦、主夫達は、12月の初めから料理の食材、ワインやシャンパン、デザートのメニュー選びに頭を悩ませています。一緒に食卓を囲む人にアレルギーのある方はいないか、また好き嫌いも考慮しますから簡単ではありません。
食後の果物やチョコレート
シャポン
夫の実家では、レヴェイヨン・ド・ノエル(クリスマスイヴ)の夕食の主菜にシャポンを選ぶことが多いです。馴染みの肉屋で予約しておいた シャポンchapon(去勢して肥育した雄鶏)にミンチにした子牛肉やゆで卵など詰め物farceをしたものを、ローストします。付け合わせは栗です。オーブンで焼く時にシャンパンを適宜振りかけて焼くことで、しっとり香り高いローストが比較的簡単にできます。フランス語で海の果物 “fruit de mer”と呼ばれる生牡蠣やオマール海老などをお祝いの食卓でいただく家庭も多いようです。我が家ではノエルを家族、親戚とで祝い、大晦日の夜は友人達と祝うのが毎年の習いとなってきましたが、よその家庭でも聞いてみると同様のパターンが多いようです。
去勢鶏のシャポンはしっとりしてまろやかな身を持つ最高級の鶏肉です。鶏肉の霜降り肉とも言われているようです。その中でも最もよいと言われるブレス産のものは近所の有名な肉屋Hugo Denoyerでキロあたり64.90ユーロでした。ブレス産以外のシャポンはその半額くらいでした。3キロのブレス産シャポンを購入するとすれば約200ユーロですから日本円で27000円ほどします。この時期にしか食べられない贅沢でガストロノミックな鶏肉です。
ちなみにシャポンは日本にもあります。世界の食品が何でも手に入り、好奇心が強く研究熱心な日本人。なければ作ってしまう、きっとあるだろうとネットで調べましたら、やはりありました。鹿児島の*3龍治農場は日本で初めて雄鶏の去勢技術を確立され、8ヶ月以上飼育したシャポンをレストラン等に卸し、また鶏のたたきとしてネットでも販売されています。
“Chapon farci aux marrons” 詰め物をしたシャポン 栗の付け合わせ より
写真はこちらのサイトより
バラッド・デュグ(Balade du gout) – 味の散歩
毎年10月に週末の2日間、パリ周辺の農園、牧場、養鶏場、養蜂場、シャンパンやワイン生産施設などが一般に開放され見学できる*4Balade du gout(味の散歩の意味)というイベントがあります。今年度は87カ所からの参加がありました。パリ周辺に農園や牧場があるのと思われるかもしれませんが、電車に乗ると車窓の景色がずっと街という東京のような日本の大都市と違い、フランスはパリから20分から30分も電車に乗るとミレーの落ち穂拾いを彷彿させるような田園風景が広がります。よい機会なので田舎の家の近くの養鶏場と養蜂場を訪ねてきました。
Pintade(ホロホロ鳥) St-German-Sous-DoueのFerme de la Derrierにて
この養鶏場では食用の鶏、ガチョウ、フランス語でpintadeと呼ぶホロホロ鳥を飼育しており、自家製の小麦、トウモロコシ、大豆、菜種油からなる自家飼料を与えています。先ほどの去勢鶏のシャポンもノエルに向けて飼育しており、ノエルの出荷前1ヶ月半は牛乳とトウモロコシだけ与えるとお聞きしました。また同じ日曜日の午後、養蜂場を見学しました。木の板を取り外せばガラス張りになっている展示用巣箱をまず見せていただきました。オーナー養蜂家のYvesさんからハチの生態や養蜂業の歴史と仕事などを丁寧に説明いただき、またこちらからも気軽に質問できる貴重な機会でした。アカシアの蜂蜜や菩提樹の蜂蜜、栗の花の蜂蜜といったフランスでポピュラーな蜂蜜のほか、ソバの花の蜂蜜という珍しいものも購入してきました。フランスの蜂蜜の種類は豊富ですし、各地に味見をして購入できる専門店もありますので、旅行でいらしたらぜひお試しになってください。
*4 味の散歩 Balade du goût http://www.balade-du-gout.fr/2013/index.php
女王蜂を指し示すLe Miel de la Brieのオーナー養蜂家のYves Veronさん
サロン・サヴォールでもバラッド・デュグでも、真摯に誇りを持って仕事をなさっている生産者にお会いできたことは、おいしいものを見つける喜びと相まってとても楽しい経験でした。来年もフランスの食事情やチーズについて皆様に発信してゆきたいと願っています。
それでは皆様、楽しいクリスマスとよい年の瀬から新年をお迎え下さい。
Joyeux Noel et Bonne Année 2014!