バカンス シェーブル編

フランスからの便り 2012~ : UPDATE /

フランスバカンス事情

フランス企業に出向中の夫は年間の休暇がフランス人と同じ5週間義務づけられていて、その4週間を夏に取得する、という日本ではありえない夏休みを過ごしています。

バカンスのために働いている!というぐらいフランス人には大切なイベント。パリでは冬の間太陽にあたる機会が少ないので、みんな太陽を求めて海へ山へと大移動です。

私たちも海を目指してパリから車で移動。子供が小さいこともあり1日の移動距離を300キロから500キロぐらいにして途中で何泊かしながら南下して行きます。日本とは違って宿泊にあまりお金がかからないからできること。
知人の中にはパリからバルセロナまで1,000キロ(東京—福岡の距離)を1日で移動したというツワモノもいます。

Valencay(ヴァランセ)

今回せっかくの機会なのでチーズで有名な町へ寄ろう、とまずヴァランセへ寄り道することに。パリから約3時間、古城で有名なロワール地方の入り口です。

こちらの看板にもあるようにお隣の街は以前に紹介したシェーブルチーズのSelles sur Cher(セル・シュール・シェール)。左には白ワインで有名なChabris(シャブリ)の看板も見えます。

今更ながらなのですが・・・フランスのワインとチーズの名前って多くは地名からきているのですね。

こちらはヴァランセ城。他のロワールの古城のように有名ではありませんがナポレオンにゆかりのあるお城。小さいながらも見所いっぱい。お庭には農場、遊具、巨大迷路まであり大人はもちろん、普通は子供が飽きてしまうお城巡りを十分楽しめる観光スポットでした。

ヴァランセ城公式サイト:http://www.chateau-valencay.fr/index.php/fr/

正面の建物の屋根の形がチーズに似ているのは偶然でしょうか?

このヴァランセはフランスで唯一名前を冠したAOCワインとAOPチーズがあるところ。
Vin et Fromages Valencayという看板が町のあちこちにあってワインとチーズの生産者を訪れることができます。

http://www.vins-fromages-valencay.com/index.php

ワインも買ってみましたが、ロワールらしい夏でも飲みやすい軽めの赤。もちろんチーズとのマリアージュもよし。

観光案内所で見つけたかわいいヴァランセチーズ専用のチーズ保存容器。

チーズを街中で買おうと思ったら直接生産所に行ってくださいと言われてびっくり。
ということで、街から車で約15分、一見倉庫のようなこちらの生産者のところへ。
こちらではヴァランセだけでなくセル・シュール・シェールなど他のシェーブルチーズも生産していました。乳を農家から集めて生産する生産者のようです。

チーズのこの型、ヴァランセ城の城主であるタレルランがエジプト遠征に失敗したナポレオンにピラミッド型だったこのチーズのてっぺんを切って出したとか。うわさの真偽はともかくパリにこのチーズを広めたのは彼のようです。

周りを炭の灰に覆われたヴァランセのチーズ。中を切ってみると真っ白。お隣のセル・シュール・シェールと違って固めです。
切る時は固いのですが、口の中に入れると溶けるような意外にクリーミーな食感。山羊臭さはなくシェーブルが苦手な人でも食べられそうです。

名称 Valencay AOP
産地 Centre
熟成 5週間
重さ・形 200-250g、ピラミッド形
サイズ 直径6-7cm、高さ6-7cm
山羊
タイプ フレッシュ

Rocamadour(ロカマドゥール)

次はヴァランセから更に南下すること300キロ、巡礼の街として有名なロカマドゥール。
ここもシェーブルチーズの生産地。

こちらは初めてロカマドゥールを食べた時に調べてから一度見てみたかった町。

こうしてみるとフランスの中央部にはシェーブルチーズの生産地が多いことに気がつきます。

チーズのラベルにもなっているロカマドゥールの風景。この地方には他にもこのように崖に張り付くような町がいくつも見られます。

日本ではあまりまだ紹介されていないようですが、このドルドーニュ渓谷一体は山あり川あり、フォアグラの産地の美食の土地としても有名で、フランスでは人気の観光地。町は多くの観光客に賑わっていました。

毎年秋にはここで気球の大会が開かれるそうです。この風景一面に気球・・・壮観でしょうね。

ロカマドゥール公式サイト:http://www.vallee-dordogne-rocamadour.com/rocamadour

観光案内所にあった様々なロカマドゥールのチーズラベル。

これまでみんな同じラベルだと思っていたのですが,上半分にはみんな同じ町の風景で統一され、下半分はそれぞれ生産者ごとに違うラベルで生産者の顔が載っている物も。
ロカマドゥールを買ったらぜひ一度チェックしてみてください。

町で見かけたロカマドゥールチーズのアイス。
悩んで食べてみましたが、味はそのままロカマドゥール・・・ま、食べなくてもよかったかな。

隣に並んでいたフランス人にもえ~という顔をされました。

ロカマドゥールのチーズの生産所を見学。

こちらではこの地方のチーズやハム、パンそしてワインなどを買って芝生の上でピクニックすることができました。
バゲットにハムとチーズを挟むだけのシンプルなサンドイッチですが、お天気がいいなか芝生の上で食べるのが最高の贅沢です。

山羊舍?の山羊たち。

この山羊たちの乳から美味しいチーズができるんですね。

チーズを作っているところもガラス越しに見られます。
こちらは型から出しているところ。手作業です。

ここで作られたチーズが300キロ離れたパリ、また時には10,000キロ離れた日本で食べられる。トラックに乗って飛行機に乗って・・・旅をしているチーズたち。
普段何も気にせずチーズを食べていましたが、チーズに限らず昔は本当に土地の物はその土地でしか食べられなかった、そんなことを思いました。

色んな土地の美味しい物が食べられる私たちって恵まれていますね。

Cabecou(カベクー)

次に寄ったのはSaint-Cirq-Lapopie(サン・シル・ラポピー)という同じくドルドーニュの小さな村。ここは「フランスで最も美しい村」のひとつ。
観光地としてではなく遺産として昔ながらの姿を守り続けている小さな村が156選ばれています。

公式サイト:http://www.les-plus-beaux-villages-de-france.org/fr

このサイトの写真を見ているだけでも楽しい。

サン・シル・ラポピーはフランスで最も美しい村の名にふさわしく15世紀からの姿を残すこの村。そこはまさに絵本のなかの世界。家の中から赤ずきんちゃんが飛び出してきそう。石の文化だからなせるワザ。木の文化の日本では考えられません。

この村はチーズの生産地ではなかったのですが、ホテルの朝ご飯にCabecou(カベクー)とかかれたシェーブルチーズを発見。普通ホテルの朝食でシェーブルを見ることはないので、さすがこの地方ならでは。

味はロカマドゥールに似ているな、思っていたら小さい円形の山羊乳のフレッシュチーズのことを総称してカベクーと呼ぶそう。
そのなかでロカマドゥールだけ唯一AOCを獲得しているのです。

しかしペリゴールでは土地の山羊の乳で作られたカベクーをCabecou de Perigordと呼び、他のカベクーとは違う!と。ここでも作り手のこだわりを感じます。

http://www.cabecou-perigord.com/cabecou-perigord

パリでも手に入るチーズたちですが、こうやって実際に作られている土地で触れると親しみが増すというか、やはり自分のなかで思い出のあるチーズとして記憶に残ります。そして・・・安い!ヴァランセはパリで買う半額でした!

次回は旅の目的地バスク地方でのチーズをご紹介したいと思います。

藤井浩子

夫、息子2人とパリ在住。趣味はミシュランガイド片手に美味しいもの食べ歩き。