第二のアメリカ料理 ~カリフォルニア暮らしより~

アメリカからの便り 2012~ : UPDATE /

ギネスに挑戦!

3月10日、アメリカのホールフーズマーケットで「地球上の各地で同時にパルメザンチーズの塊を割る」というイベントが開催され、総計400個以上のパルメザンの巨大な塊が割られました。私の行きつけだった店舗でもそのうち2つがカットされたのだとか。

イベントの様子

2つとはいえ、写真のとおり巨大なパルメザンですから、割れば相当な量です。写真の後ろの棚やショーケースに写っているのも全てチーズ。アメリカ人のチーズに対する思い入れと消費量がしのばれます。

マーケットのチーズセクションの一部。
ずらりと並んだチーズが壮観。

シンコ・デ・マヨ

さて、アメリカで人気のあるお料理の中にはチーズを使うものがいろいろありますが、今日はその中でもメキシコ料理を取り上げたいと思います。
サンノゼで初めて迎えた5月5日のことです。息子の通うプリスクールへお迎えに行くと、麦わらのソンブレロを被って、唐辛子をかたどったおかしなネックレスを首に下げた子どもたちが楽しそうに待ち構えていました。スペイン語でそのまま「五月五日」を意味する「シンコ・デ・マヨ」というメキシコのお祭りを祝っていたのでした。
日本人にはもちろんこの日は端午の節句で、「シンコ・デ・マヨ」なんて初めて聞いたと面白がる私に友人が「じゃあ今からあなたたちの初めてのシンコ・デ・マヨのお祝いに、一緒にタコベル(メキシカンのファーストフードチェーン)に行きましょうよ」と誘ってくれました。カリフォルニアとメキシコは隣接するので非常に身近な存在です。起源を「1862年のプエブラの会戦でメキシコ軍がフランス軍を奇跡的に撃退したことを記念する」この祝日は、今では単にメキシコの文化を楽しむお祭りとして本国よりもアメリカ合衆国でより盛大に祝われているのだそうです。

参考サイト:シンコ・デ・マヨ

ソンブレロとレッドチリのネックレスを身につけ、
ご機嫌な筆者の息子

第二のアメリカ料理?

メキシコ文化といえば、人によって思い出されるものは様々だとは思いますが、やはり生活に最も密着した文化といえば食べ物。重要な労働力としてメキシコ移民はアメリカに多く居住していますし、比較的安価でヘルシー、そしてトウモロコシの粉や豆を多用するため腹持ちのいいメキシコ料理はアメリカ風にアレンジされ、すっかりアメリカの食文化の中に定着しています。
揚げ物や肉、チーズが多用されるタイプはテキサス風のテックス・メックス、そしてヘルシー志向の高いカリフォルニアスタイルは新鮮な野菜やハーブを多用し、カル・メックスと呼ばれています。
アメリカナイズされた様々なタイプがあるメキシコ料理ですが、どこのお店に行ってもとにかく大量、というのが私の印象です。豆、肉、野菜、チーズなどをトウモロコシ粉のトルティーヤに載せたものはおなじみタコス、先ほどの材料を小麦粉のトルティーヤで包んだブリトー、これらをご飯と一緒にお皿に持ったボウルタイプのものは大きなお皿が見えないぐらいの大盛りです。料理が出てくる前にはドンと盛られたトルティーヤ・チップスを食べながら待つようになっています。チップスに付けて食べるサルサも種類が多いので、お好きな方には非常にお得感があって嬉しい食事です。よく使う野菜はトマト、アボカド、そしてチリ(唐辛子)などなど。

メキシコは地続きですので、大量のメキシコ人が移住して様々なところで働いています。職種はいろいろありますが、ガーデナー(庭師)もその代表格です。
アメリカの映画やドラマなどでおなじみのアメリカ家庭の広い芝生を自分で刈るのは実際にはかなりの重労働。毎週のように手入れしないと植物の生育の早いカリフォルニアではすぐに草ぼうぼうになってしまいますから、定期的にガーデナー(庭師)さんにお世話をお願いするのは割合一般的なのです。
私たちが住んでいた借家には家賃にガーデナー(庭師)代も含まれており、そのガーデナー(庭師)のミロさんもやはりメキシコ人でした。いつも陽気にスペイン語の歌を大声で歌ったり上手な口笛を吹いたりしながら手際よく庭木や芝生の手入れをしていたミロさんが、うちの庭に小さい畑を作った時に、土を耕してから「チリは植えないの?ここならいいのが出来るよ」と嬉しそうにおっしゃるのを聞いて、やっぱりメキシコ人らしいなあと思ったものです。

参考サイト:All about「人気のあのメキシコ料理、実はアメリカ発祥」

たっぷりのチーズが美味しそうにかかったエンチラーダ。
メキシコ料理の例にふさわしくかなりの大盛りですが、これで1人前。

メキシカンチーズ

アメリカのスーパーマーケットのチーズセクションに行くと、たくさんの種類のチーズが売られていますが、その中には「メキシカンミックスチーズ」と名付けられたシュレッドタイプのチーズもあります。ナチョスやケサディーヤ、エンチラーダなど、チーズを使うメキシコ料理に使うもの、と認識していましたが、このたび何のミックスだろうと改めて調べてみました。
Sargento社とCostcoのブランド、Kirklandのものでしたらモントレージャック、チェダー、ケソケサディーヤ、アサデロの4種、Trader Joe’sとKraft社 のものはモントレージャック、チェダー、アサデロ、ケソブランコの4種、とだいたい似たような感じです。
モントレージャックは以前にもご紹介しましたが、アメリカ、北カリフォルニアのモントレーに起源を持つチーズで、チェダーもアメリカでは非常にお馴染みのもの。アサデロとケソケサディーヤやケソブランコがいわゆるメキシカンチーズですから、ミックスチーズでもやはりアメリカ風にアレンジされていることがわかります。
「ケソ」はスペイン語でチーズを意味します。ケソケサディーヤはメキシコ北部のシナロアに起源を持つ、セミソフトタイプの溶けるチーズです。これらのチーズをトルティーヤに挟んでグリルしたものがケサディーヤで、シンプルで食べやすいので子どもにも人気です。息子がまだキンダーガーテンに上る前のサマーキャンプで「今日はお料理を習った」というのでどんなのかと思ったら、トルティーヤにチーズを挟んだものをワックスペーパーで包み、なんとアイロンで過熱したのだそうです。なるほど、そんな料理の仕方もあるのかと目からウロコでした。

写真はメキシカンチーズミックス。
Sargento社のホームページより。

さらにメキシカンチーズについて、もうちょっと調べてみますと、上記のミックスチーズの一部に入っていたケソブランコはモントレージャックやモツァレラに非常によく似たフレッシュチーズ。その他にもフレッシュタイプではそぼろ状にしやすく、かすかな塩気がさっぱりしたパネラ、溶けるタイプでは先程のケソケサディーヤ(マイルド)の他、ストロングフレーバーのアサデロ、くるくると巻いた形状が面白いオアハカ、マイルドチェダーによく似たチワワなど、産地や用途によって様々なチーズがあるようです。また、コティーハというパルメザンのようなハードチーズもあります。
16世紀にスペインからもたらされた酪農とチーズが新たにメキシコで現地の農産物や気候と出会って豊富なメキシコ料理を生み出し、それがアメリカに入ってまたアレンジされていることに思いを巡らすと、メキシコ料理の一皿が一層味わい深いものになるような気がしました。

参考サイト:
http://mexicanfood.about.com/od/resources/a/mexicancheese.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/Cheeses_of_Mexico

オアハカチーズ。ストリングチーズのように裂ける。
写真はhttp://www.cheesewiki.com/quesillo-oaxacaより

エンチラーダの作り方

今回のメキシカンチーズのおさらいに、ここでエンチラーダの作り方をご紹介します。アメリカではどこでも普通に手に入るトルティーヤやメキシカンミックスチーズなどですが、日本ではどこにでも売っているわけではありません。そこで、今回はトルティーヤを作るところから始めます。意外と簡単ですので、ぜひトライしてみて下さい。

仕上げに使うチーズはチェダーやモントレージャック、またはメキシカンチーズが理想的ですが、ピザ用のシュレッドチーズでも大丈夫です。(チーズの目安は約150g)

エンチラーダ

トルティーヤの材料(6枚前):

強力粉 200g
ひとつまみ
オリーブオイル 大さじ1
ぬるま湯 90~100cc

作り方:
1.ぬるま湯以外の材料をボウルの中で混ぜ合わせる。
  次にぬるま湯をすこしずつ加え、さらに混ぜる。
2.だいたい混ざったら手でしっかり捏ねる。なめらかになったらラップでぴったりと
  くるんで30分以上室温で寝かせる。
3.生地を6等分してめん棒で丸く、薄くのばし、フライパンの中火で両面に軽く焼き
  色が付き、ぷっくりと気泡が出来て膨らむまで焼く。
  粗熱がとれたら、乾燥しないようにビニール袋に入れて保存する。冷凍保存も可能。

*これにチェダーなどお好みのチーズを挟んで両面を焼いたものがケサディーヤ。

エンチラーダの具材(トルティーヤで巻く部分):

チキン胸肉(皮を取ったもの) 150g 細切りにしておく
ピーマン(グリーンパプリカ、赤パプリカなどでも可) 100g 細切りにしておく
玉ねぎ(中) 半個 細切りにしておく
にんにく ひとかけ みじん切り
コショウ 少々
シラントロ(香菜) お好みで適宜
パプリカパウダー ひとつまみ
クミンパウダー ひとつまみ
コリアンダーパウダー ひとつまみ
ひとつまみ

作り方:
  1.以上の材料を炒めておく

エンチラーダソース:

小麦粉 大さじ2
オリーブオイル 大さじ4
カットトマト缶 150g
チリパウダー お好みで。基準は大さじ3~4
ガーリックパウダー 小さじ1/4
塩とオレガノ 各小さじ1
クミンパウダー 小さじ1/4
コンソメ粉末 小さじ2

作り方:
1.フライパンにサラダオイル、小麦粉、チリパウダーを入れ、焦がさないように炒める
2.残りの材料を入れて少し煮詰める

仕上げ:
1.耐熱容器にオイルを塗っておく。そこにトルティーヤソースを一部分塗る。
2.具材を6等分して、チーズの一部とともにトルティーヤで葉巻のように巻く。
3.1の耐熱容器に2の巻いたトルティーヤを並べる。
4.残りのエンチラーダソースをかける。上に残りのチーズを散らす。
5.180度のオーブンで約15分、表面のチーズが融けてちょっとこんがりするまで焼く。
6.お好みでサワークリームやアボカドを添えていただきます。

西川久美子

本職はピアノ弾き。3年2ヶ月の米国カリフォルニア州サンノゼ暮らしを経て、現在関西在住。 夫、息子、娘との4人ぐらし。趣味は歌、ズンバ、ピラティス、お菓子作り。