パリ国際農業見本市(Salon international de l’agriculture)

フランスからの便り 2012~ : UPDATE /

パリのサロン事情

フランスではSalonと呼ばれる見本市、展示会が年間を通して各種催されます。
日本でも開催され馴染みの深いモーターショーもSalon d’automobile、チョコレートの見本市もSalon du chocolatです。また手芸や本のサロン、日本で言う就職合同説明会といったものもサロンと呼ばれます。
平日はすでに定年したと思われる年配のムッシュー、マダム、週末は家族連れのお出かけの場としても人気です。

今回は2月23日から3月3日までパリで開催されたフランスのビックイベント、国際農業見本市をご紹介したいと思います。
参考サイト:http://www.salon-agriculture.com

一年に一度開催されるこの見本市はパリでも最大規模の 毎年大好評の見本市。
今年は開催50周年記念の様々なイベントも催されます。

生産者としては動物の品評会、また製品のコンクールと一年の仕事の成発揮する晴れの舞台でもあります。

Porte de Versailles にて開催

パリの南端に位置する展示会場のほぼ全てのホールを使って開催されるため、とにかく広い!
動物が展示されているホール(これだけで馬、牛、ブタ、小動物と4ホールに別れています)農作物のホール、生産者の商談のホール。などなど。
広い会場内を移動するプチトランも走っていました。

羊、ヤギ、ブタの品評会場賞を取った動物のケージにはプレートがついています

Pavillon 7 フランス各地方物産館

今回私が見て来たのは各地の生産者が出店する、日本で言うと「物産展」的なホール。
チーズやワイン、フォアグラ、パテ、チョコレートなど色々なものを試食、購入することができます。
(シャンパンだけは無料試飲なし!)

もちろん試食だけでもOK。最近色んなサロンで試食しまくっているのでだんだん感じよく断るワザが身に付いてきました。

朝開場直後は空いていましたが、お昼からはすごい人ごみに!

農業コンクール Concours General Agricole

フランスで買物する際によく見かけるこの葉っぱのマーク →

金・銀・銅とあって買物する時に参考にはしていましたが、あまり深く考えたことなかったこの賞、なんとこの見本市のコンクールで選ばれるものでした。

農業・食料省の管理のもと行われるこのコンクールは1870年に創設された『伝統と権威ある』もの!

参考サイト:http://www.concours-agricole.com

こちらに品評会やコンクール審査の動画があり、会場に行った気分に!

参考サイト:http://www.concours-agricole.com/videos.aspx

昨年ワインは4000近く、生産品も1000点ほど受賞しており、ちょっと多過ぎる気もしないでもないですが・・・(受賞は約30%、金賞は9%ということでした。確かに金賞はあまり見なかったかも)。

各製品の受賞とは別に”優秀生産者”制度があります。
賞の獲得でたまるポイントが一定値に達すると”優秀生産者”に認定されます。

見本市開催の1週目に評価が行われ、私が行った日にはもう2013年の受賞品が決定していました。
受賞者のブースにはこの大きなメダルを印刷したものが貼ってあり、商品にもこれと同じ小さなシールが貼られています。

ということで、広過ぎる物産会場を今年の受賞品を探して周ってみました。

コルシカのオリーブ生産者スタンドにて。
圧搾機の前にいるフランス人女性はどうやら有名人のようですが、誰かわからず・・・。

2013年コンクール受賞チーズの数々

まずはこちらのノルマンディーのチーズ生産者。
カマンベールとポンレベックが銀賞を受賞したそう。

名称 Pont-l’eveque AOP
産地 ノルマンディー
熟成 5-6週間
重さ・形 350g、正方形
サイズ 縦横10センチ、高さ2.5センチ
原料 牛乳
分類 ウォッシュタイプ

近くで生産している洋梨のシードルと一緒に味見させてくれました。
ポンレベックは街の名前、フランスのチーズの中でも最も古い物の一つ。
ウオッシュタイプのため匂いがキツいと思い込んでいて今まで食べたことがなかったのですが、カマンベールよりマイルドな味わい。ついつい食べ過ぎてしまいます。

カマンベールが丸いのに対してこちらは正方形

アルザス・ロレーヌ地方の生産者。
こんな風にその地方の服装をしている人もたくさんいます。

こちらではマンステールが銀賞を受賞。

名称 Munster AOP
産地 アルザス・ロレーヌ
熟成 2-3ヶ月
重さ・形 0.3-1.5kg、円形
サイズ 直径13-19センチ、高さ2.5-8センチ
原料 牛乳
分類 ウォッシュタイプ

このチーズも同じくウォッシュタイプ。ポンレベックよりは匂いがきついですが、温めて食べると不思議なぐらい匂いが消えます。
パンに乗せてトーストするとコクがあってとても美味しく食べられます。

こちらの大きい円形のチーズはカンタルというハードタイプのチーズ。
熟成が進むごとに旨味が凝縮されていきます。
もちろんチーズが得意でない人でも美味しく食べられる味。

4つのタイプのチーズが全て受賞していました。

カンタルは県の名前でもあり、こちらは県が出店しているようでレストランも併設、スタッフもみんなお揃いの服を着ており、大規模なブースでした。

名称 Cantal AOP
産地 オーベルニュ
熟成 3-6ヶ月
重さ・形 35-45kg、円形
サイズ 直径35-46センチ、高さ35-39センチ
原料 牛乳
分類 ハードタイプ

こちらはオッソ・イラティという変わった名前のチーズ。
バスク地方のオッソ谷のイラティ森に由来するそう。
銀賞受賞です。

羊の乳から作られるこのチーズはハードタイプですが、先ほどのカンタルとは違い弾力があり味も乳の風味が感じられます。

こちらの隣のスタンドでは同じくバスク地方のエスペレットという唐辛子のジュレをこのオッソ・イラティに乗せて試食させてくれました。

乳くさいのが嫌いな人もこれだと唐辛子の風味で美味しく食べられます。
こういった新しい発見があるのもサロンの楽しみの一つです。

名称 Ossau-iraty AOP
産地 バスク地方
熟成 最低3ヶ月
重さ・形 2-7kg、円形
サイズ 直径18-28センチ、高さ7-15センチ
原料 羊乳
分類 ハードタイプ

エスペレットのパウダー(金賞受賞)、ペースト、ジュレ。
日本の唐辛子ほど辛くないので色々な料理に使えそう。

この会場の中には各地の名物料理のレストランも出店しており、お昼になると大にぎわい。
私はお昼にアリゴというオーベルニュ地方の名物を食べてみました。

こちらはトム・フレッシュというチーズにジャガイモと生クリームを「力強く」混ぜて作った付け合わせ。横で見ていてもかなり力のいる作業です。
しかし、なぜこんなに伸びるのか、謎。

この組み合わせ美味しくない訳がないですが、これ、かなりもたれます!
ネットで検索したら日本語でも色々レシピがありました。日本人の食に関する探究心ってほんとすごい!
興味のある方はぜひ挑戦してみてください。

コンクールの受賞品はネットで購入でき、フランス国内であれば郵送してくれるそうです。会場にはコンクール受賞品だけを使ったレストランもありました。
生産者にとっては一年の労働の評価だけでなく、またとない宣伝の機会でもあるようです。

試食して断るのが上手くなったものの、ジャム、サラミ、エスペレット、パテ、ワイン、もちろんチーズ・・・フランスをよく知るため、と自分に言い訳してやはり色々買ってしまいました。

テーマパークのように大人も子供も楽しめるサロン、機会があればみなさんもぜひ足を運んでみてください。

オーベルニュ名物料理、アリゴ
藤井浩子

夫、息子2人とパリ在住。趣味はミシュランガイド片手に美味しいもの食べ歩き。